ときどき見かける街路樹に少し色の濃い種類のサクラがありますが
大振りなソメイヨシノは、関東ではまだかたい蕾がほとんど。
もうじきやってくるサクラ前線が待ち遠しいですね。
昔、樹医さんから聴いた話。
着物や帯の反ものに“桜色”というのがあるけれど
どうやって染めるか知ってるかい?
花じゃないんだ。幹や枝なんだよ。
花の季節が去って、誰にも愛でてもらえなくなったそのあとも
ひとしれず雨や風に耐えて、暑さ寒さをくぐりぬけて
つぎの春のための芽をはぐくんできた、その体そのもの。
苦労を知っている木の皮が、あの色を出すんだよ。
今年になって伸びた新米の枝じゃない。
もう何年もそういう経験をした太い枝だけが、あの色を出すんだ。
大きな鍋に入れて煮込むとな、命の最後をふりしぼるように、真っ赤な液になる。
それが布を染めて、あのサクラ色になるんだよ。
なんだか、サクラの人生って、覚悟が伝わってくるような気がするんです。
きれいな花のときは、誰にだって褒めてもらえる。
だけど、サクラはじっと動かない。
花が散ったそのあと、誰にも見向きされなくても
ずっと、そこに根を張って黙々と頑張ってる。
だからこそ次の年の春、みんなを振り向かせることができる。
直近、とてもたいへんな時間を過ごした私。
いろんな覚悟をして、たくさんの涙をのみこんで、
この国を変えられないのか?と
やりきれない思いを抱えつづけた日々。
だからこそ、この春は、どうしても、咲く!
ぜったい咲かなきゃ。
サクラ前線がここにやってくる前に。
サクラに追いつかれないように。
追い越されないように。
冬はかならず、春となる。